PERIODONTAL 気づかないうちに進行する歯周病
2016年に厚生労働省によって行なわれた歯科疾患実態調査によると、30歳以上の方の約4割が、歯周病の症状である“歯肉からの出血”があることがわかっています。
歯肉の腫れや出血は歯周病の症状ですが、強い痛みなどのわかりやすい自覚症状はないため、受診しないまま症状が進行してしまうケースが少なくありません。歯が大きく揺れるようになって慌てて受診したころには手遅れで、抜歯となってしまうこともあります。
毎日きちんと歯磨きをして歯周病を予防するのはもちろんのこと、歯肉の腫れや出血などの症状がある場合は、できるだけ早い段階での受診が大切です。
また、歯科医院で定期的に検診を受けると、歯周病の早期発見と予防ができる可能性が高まります。大切な歯を守るために、ぜひ一度受診ください。
歯周病の原因
歯周病の直接的な原因は、歯垢の中に含まれる細菌です。歯垢は歯に付着した糖分をもとに繁殖した細菌のかたまりで、白っぽくネバネバとしています。歯垢の中には、重量1mgあたり1億個もの細菌が含まれており、この細菌が産出する毒素によって、歯肉などの歯周組織が炎症を起こします。
歯垢が石灰化すると歯石となり、細菌はそこを温床としてさらに増え、炎症は歯を支える歯槽骨へと進行していきます。歯槽骨が炎症によって破壊され続けると、歯を支えられなくなり、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
そのため、歯周病の原因となる歯垢や歯石を徹底的に取り除くことが、歯周病の治療や予防の基本となっています。
歯周病の進行と治療方法
歯周病の症状は、炎症が歯肉にとどまっている『歯肉炎』と、炎症が歯槽骨にまで及ぶ『歯周炎』に分けられます。歯周炎はさらに進行度によって軽度・中度・重度の3段階に分けられ、それぞれの段階に合った治療を行なう必要があります。
歯周病の進行と治療法は、以下のようになります。
健康な状態
とくに炎症などは起きておらず、歯周ポケット(歯と歯肉の間)が1~2mmで、健康な状態です。
【治療方法】
特別な治療は必要なく、正しい歯磨きを続けることで歯周病にかかったり再発したりしないように気をつけます。
歯肉炎
歯周ポケットが2~3mmで、歯肉に炎症が起きていますが、自覚症状はありません。
【治療方法】
正しい歯磨きによって、健康な状態に戻ります。これ以上進行しないようにすることが大切です。
歯周炎(軽度)
歯周ポケットが3~5mmで、歯肉だけではなく歯の周囲の歯槽骨にも炎症がおよびはじめますが、自覚症状はほとんどありません。
【治療方法】
正しい歯磨きに加えて歯科医院で歯石除去を行なうことで、症状を改善させます。
歯周炎(中度)
歯周ポケットが4~7mmで、歯槽骨は半分ほど溶けており、歯のぐらつきを感じることがあります。
【治療方法】
歯周ポケット内の歯石や汚染されたセメント質を取り除きます。症状によっては、外科手術によって歯周ポケットの奥深くにある歯石や汚染された組織を取り除きます。
歯周炎(重度)
歯周ポケットが6mm以上で、歯槽骨が2/3ほど溶けているため、歯がぐらついて硬いものを噛めなくなります。
【治療方法】
外科手術による治療を行ないます。場合によっては抜歯し、インプラントによる治療などを行ないます。
当院の歯周病治療メニュー
歯磨き指導
歯周病治療の基本は、毎日お口の中で発生しつづける歯垢を歯磨きで徹底的に取り除くことです。たとえ毎日必ず歯磨きをしていても、歯垢を取りきれていなければ、歯周病は改善できません。
歯磨き指導では、磨き残しができやすい部分をチェックしたうえで、患者さまのお口の状態に適した歯磨き方法を丁寧に指導します。
歯肉炎や軽い歯周炎であれば、適切な歯磨きを毎日行なうことで、症状の改善が期待できます。
スケーリング・ルートプレーニング
『スケーリング』は、おもに軽度の歯周炎に対して行なう処置で、歯磨きでは取り除けない歯垢や歯石を専用の器具を使って取り除きます。
中度や重度の歯周炎の場合は、スケーリングに加えて『ルートプレーニング』も行ないます。ルートプレーニングでは、専用の器具で歯周ポケットの奥深くに付着した歯石や汚染されたセメント質を削り取り、歯根の表面が滑らかになるように磨きます。歯根の表面が滑らかになると、歯石が再び付着しにくくなるうえに、歯根に歯肉が接着しやすくなります。
歯周外科治療
中度や重度の歯周炎で、スケーリングやルートプレーニングを繰り返しても症状が改善されない場合に行なう外科手術による治療です。フラップ手術ともいいます。
歯周外科治療では、局所麻酔をして歯肉を切開し、歯根を露出させることで、スケーリングやルートプレーニングでは取り除けなかった歯石や汚染された組織を取り除きます。また、清掃しやすくするために、デコボコした歯槽骨の形を整える処置を行なう場合もあります。
・治療内容によっては自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
・基本治療で改善しない場合に行なう歯周外科治療などでは、歯肉を切開するため、腫れや痛みをともなうことがあります。
・治療によって歯肉が引き締まってくるため、被せ物と歯肉の段差が目立つことがあります。